2023/08/01
タイトル | ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない 物流の見方を変えれば、事業の味方になる |
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作者 | 細木和茂 |
発売日 | 2017年4月27日 |
価格 | 定価:本体1728円(税込) |
判型 | A5判 |
ページ数 | 120ページ |
内容紹介
SCM(サプライチェーンマネジメント)は、全体最適解とよく言われますが、何を持って全体最適解ですかと尋ねると、90%の人は物流コストと答えます。つくる人、運ぶ人、売る人、それぞれ利害関係があります。自分の立場で考えれば、自分の事業領域の中でコストミニマムがその企業にとっての全体最適解です。それなら、仮につくる企業、運ぶ企業、売る企業のそれぞれのコストミニマムを加算したら全体最適解になりますか?全体最適解にならない事もあります。なぜなら利害関係があるから、うちを安くするために他社の分を高くなるという事もあります。それなら全体最適解はどうなりますか?例えば、つくる企業、運ぶ企業、売る企業が仮に1社だとしたら、それは全体最適解になるハズです。例として、アマゾン、ユニクロ、ダイソーなどは仕入れる(つくる)、運ぶ、売るがすべて1社の判断で指示が出ています。この場合は全体最適解になります。それなら話を戻して利害関係のある各社の全体最適解は、何を持って判断すれば良いのでしようか。私は全体の在庫が一番少なくなった時が全体最適解と考えています。これならつくり過ぎ、運びすぎ、売りすぎを防止できます。それだけでなく、つくるタイミングの早すぎ、運ぶタイミングの早すぎ、売るタイミングの早すぎを防止できます。早く行動を起こすことが、安心のため、安全のために起こしていますが、今やインターネットがこれだけ浸透発展しているので、大規模データも瞬時に分析加工が可能になっています。だから、「ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない」が必要になります。この「ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない」はSCMの行動指針だと考えてください。「ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない」の行動基準で行動すれば、全体の在庫は最小になります。だから全体最適解になります。インターネット時代の今だからこそ、仮想1社を想定して、つくる、運ぶ、売るのタイミングと量を指示できるようになっています。そして何よりも、今までは後ろの工程から指示があって、アクションが始まります。例えば店舗の受発注があって、センターでは出荷します 出荷すれば在庫が減り、在庫補充を指示します。工場に在庫があれば出荷出来ますが、なければ生産指示になります。しかしインターネットの時代はあたかも複数の企業に対して、1つのサーバーがシュミレーションしながら、つくる、運ぶ、売るの指示を出し、その指示通りにアクションを取ります。結果として、在庫がミニマムになります。これが「ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない」のコンセプトです。物流はうまくいっている時は何も言われないし、感謝もされません。しかしひとたび事故やミスをすれば、烈火のごとく怒られます。昔のように在庫が多かったときは、ミスしても代替品を出荷すれば問題はなかった。ところが今は各社とも在庫を減らしています。だからこそミスも許されなくなっています。このミスの中には在庫があると表示されているのに、実際にはなかった、出荷出来るような状態ではなかったなどの現象も含みます。今や全世界の在庫がリアルで表示されています。もし欠品が生じそうになった時に、つくるよりも横持ちする事も選択肢の1つとして挙げられます。これがSCMです。SCMの行動基準の判断材料が在庫です、この「ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない」は在庫を切り口にして、全体の構造を再設計する事が目的です。是非ご一読の上、ご意見ご感想をお聞かせください。 細木和茂Kazu.hosoki@gmail.com
著者紹介
経営コンサルタントとして30年200社支援してきました。
1社を除き、199社は業績が順調です。200社の中で130社は韓国企業ですその韓国企業のクライアントの1つに、韓国の辛ラーメンの会社があります。辛いという漢字は、日本では「つらい」という意味もあると話をしたら、それなら「一」を書き加えて「幸せ」という字をつくったらどうかと言われました。それ以来、私は名刺代わりに辛ラーメンに「一」を書き足して幸せ経営を指導するコンサルタントと名乗っています。特にインターネットの時代になると、既存客が知らないうちに離れていく事もあり、顧客数も先細りしています。バブルの時は離れる以上に新規の顧客がありましたが、今は意識した経営をしないと顧客を維持できません。これが幸せ経営の根底にあると思っています。
私のコンサルテイングの主戦テーマは「物流・ロジスティクス・SCM」です。私の物流のモットーは「ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない」です。これは電子書籍にもしました。決して欠品を起こさない、かと言って在庫を過剰に保有しない、万が一欠品を起こした場合でも最短時間で供給する。そのためには今までの発注が来てから行動を起こすのではなく、市場の売れ筋兆候を、生産・調達、物流・仕入れの各企業が同時に同じ情報を見て、一斉に行動する仕組みに変える事が最終的に全体最適解になる。これが私のコンセプトです。生産・物流・販売は各々利害関係のある別法人です。従ってややもすれば、各企業のエゴが働いて全体最適解にならない事が多い。まさに部分最適解の積み重ねは全体最適解とイコールではないというコンセプトです。反面、生産・物流・販売が1社の企業もあります(オペレーションは別の企業が担当していても、全体に指示や管理を行う企業が1社という意味です)。利害関係のある企業がバラバラのコンセプトで運営していれば、当然1社がコントロールする全体最適解の企業に負けてしまいます。生産・物流・販売をあたかも1社の如く、コントールし、どこでいつ行動を起こすのかを仕組みとして作り上げる事が、SCMと考えています。その行動指針として「ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない」があると考えてください。
私は日本がバブルの終わりごろ(1988年)に、韓国企業のコンサルテイングに初めて行きました。1988年はソウルオリンピックの時で、韓国は漢江の軌跡と言われた高度成長期の真っただ中でした。この頃は日韓ともにまだ高度成長期なので、つくれば売れた時代、在庫よりどれだけつくれるか、どれだけ運べるかがマネジメント課題でした。ところが1992年に日本でバブルが弾け、1998年に韓国ではアジア通貨危機が訪れ、不景気の始まりでした。この頃はつくっても売れない時代、何が売れるのかもわからない時代です。従ってサプライヤーは多品種に品揃えして、何が売れるのか顧客が選択するのを待っていた時代です。物流で言えば、多品種小ロット多頻度物流の仕組みをつくる時代でした。そして21世紀に入るとインターネット時代の到来です。顧客は欲しい商品を選択し、価格比較をしてネットで購入し届けてもらう。そしてその商品のレビューを書き込む。他の顧客はこのレビューを見て購入する。この繰り返しなので、市場では売れ始めると2倍3倍に売れるどころか、2乗3乗になって売れる事も頻繁に発生しました。逆もあります。口コミなどで評価がイマイチになると1/2,1/3ではなく、1/4、1/8に激減することもありました。どんな時でも「欠品を起こさず、在庫過剰にならず」がネット時代のマネジメント課題です。それと同時にネット時代になると、個性的なものが要求され、そのオプション加工工程や進捗度合いもスマホなどでモニタリングできるようにもなりました。まさに個別化対応かつ届ける仕組みが必要になってきました。この時に「ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない」を私は世に提唱してきました。コンサルタントを30年もやっていたおかげで、「大量生産・大量販売時代」「多品種小ロット多頻度時代」「個別の要求に応じた宅配時代」の3つを経験できました。これが長くコンサルタントをやってきた財産になっています。アジアの地域によっては、高度成長もあり中成長もあり低成長もあると思いますが、それぞれに応じたマネジメント課題は解決できます。これが私の代名詞になってきました。